BLOG BLOG CLASKAから送る日々のメッセージ

2010.01.06

this is it "東京物語”



最高に洗練された世界がここにある…。

これ以上ないというほど平凡でありふれた物語と光景。
にもかからず気がつくと心の襞にまで何かがじわじわとしみこんでいる。
これ見よがしな作為性を一切排除した単純化された表現が、観る者の
経験や感受性に応じた豊かで圧倒的な余白を生む。
ああ東京物語、嗚呼小津安二郎。


今年もこの映画を観て涙を流し私の新しい年はスタートしました。
このところ歳のせいか涙腺は緩む一方で情けない反面、こういう映画を繰り返し
観るたびに、歳を重ねるということの意味や価値を感じます。
人生ってどうしてこうもアンビバレント=両義的に出来ているのでしょうか。
そして「大切なことは半径3m以内に全部ある」というあの宮崎駿監督の言葉が
よみがえってくるのです。


それにしても小津安二郎という映画監督の老練さには感服します。
世の中には表面的で都合のいいシンプルとかミニマルなんてものが溢れていますが
真のシンプリシティというのはこういう映画のことを言うんだって最近になって
やっとわかった気がします。若い頃はこういう深みがなかなか理解できません。
私自身も正直、小津映画の端正さよりも黒澤映画のダイナミズムをより愛していました
が(今でも愛してはいるのですが)、芸術表現としての深さということにおいては
やはり小津作品は黒澤映画をはるかに凌駕すると思うようになりました。


東京物語を観るたびに親孝行したいという衝動が急に湧いてくるのですが
もし今親孝行をしたいと思うなら、この「東京物語」を親と一緒に観ることを
おすすめします。私はかつて実践したことがあります。その効果は劇的では
ないかもしれませんが、小津映画同様、じわじわとお互いのこころに広がる
上質で真に豊かな何かをもたらしてくれることだけは保証します。


ということで?!本年もどうぞよろしくお願い致します。

Posted by okuma