2009.06.24
我々は皆、しとやかな獣である
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役者志望?いいえあなたはすでに役者です
前回「本音と文化」などという大げさなタイトルでブログを書いてしまいましたが
あの後、まさに本音と欲望だけで生きている人間たちを描いた素晴らしい映画を
観ました。とはいっても今からもう半世紀近く前、1962年に封切られた名匠・
川島雄三監督による「しとやかな獣」です。
映画は常識をはるかに凌駕する守銭奴の元軍人一家と彼らをさらに上回る悪女
(この悪女を演じる若尾文子さんが最高にクール!)ほか数名が繰り広げる
いわゆるピカレスクコメディです。
元軍人である主とその妻は郊外の団地(当時で言うところの文化住宅)で何不自由の
ない暮らしをしているのですが、その生活は息子が勤め先の芸能プロダクションで
使い込んだ金と、さらに親自ら娘を流行作家の愛人にしたてあげた「成果」からの
報酬により成り立っています。にもかかわらずそんなモラルフリーな一家の誰一人
として微塵も悪びれたところがありません。もう「あっぱれ」というしかない。
これがほとんど公団団地の狭い一室だけで描かれています。物語進行のテンポの
小気味良さと、大胆で斬新なカメラワークが全く飽きさせないのです。
監督ほか制作者の力量を感じずにはいられません。
もう現代よりはるかにアバンギャルドです。
それはともかく、観始めたころは意図的に欲望を肥大化させた個々のキャラクターを、
映画的フィクションとして半分笑って観ていたのですが、物語が進行していくうちに、
登場人物の心性がなんだか不思議なほど自然に思えてくるのです。
気がつくとまったく他人事ではなくなっているんですよね。
前回と同じような話になってしまいますが、一皮むけば人間なんてほとんど変わらない。
言ってしまえば欲の塊です。欲という名の「自然」を私たちは抱えている。
そう思うとますます人は誰でも「私」という役柄を演じるアクターでありアクトレス
なのだという物言いが真実味を帯びてくる気がします。
DVDも発売されているそうなので、ぜひ機会がありましたら皆さんもご覧になって
みて下さい。むろん川島雄三の傑作「幕末太陽伝」もお忘れななく。
Posted by okuma
