2009.04.29
羊たちの逡巡
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とあるギャラリー内を興奮気味にウロウロする大の男が二人。
時々目を合わせてはときにほくそ笑み、ときに溜め息をつく。
気持ち悪い…。いや、でもそんなことは言っていられない。
どれにするか逡巡する迷える羊たちは真剣そのものである。
ギャラリーに絵を見に行ってこんなに興奮したことがいまだかつてあっただろうか。
作品が気に入ったのは言うまでもないが興奮の理由はそれだけではない。
それは二人とも作品を買う気だからである。むろん二人とも金はない。
アート作品を買う余裕なんてどう考えてもないはずだ。
にもかかわらずどうしようもなく欲しい。
「決して簡単には手に入らないが、無理をすればなんとかなるかも」。
この絶妙なバランスが興奮神経を余計に刺激するのだ。
ほとんど恋愛である。
「結構知られているし、みんな大好きとか言うわりになんで買わないのかな」
「だめだよなあ日本人は」
「情けないね。金を理由にするけど実際はそうじゃないね。勇気と文化的意識の欠如」
「表に値段がちゃんと出ていないから皆勝手に高いと思っているのかな」
「原画でこの値段ってあり得ない価格だと思う」
「いやああり得ない。やっぱりもう一枚買うか」
「これ買わないと絶対後悔する」
「オレもし金と場所があったら全部買ってもいい」
「買ってもいいね」
「でも金がない自分らがさ、こうして気に入ったものをさあ、誰かが買うから
真似してじゃなくて皆買わないのに買うところに意味あるよね」
「そうそう。でも別に売るつもりないけど絶対上がるね」
「間違いない……」
こうして迷える羊たちの楽しい逡巡はいつまでも続くのでした。
Posted by okuma
