2008.02.20
1x1=2
ある小さな店と店主との出会いがその後の世界観を大きく変え、広げてくれた。などと書くと少し大げさな物言いだと思われるかもしれない。でもそれは事実である。
今はなき「プッシュ・ミー・プル・ユー」というその店は、まさに「伝説の店」というのにふさわしい。店にはアイアーマンやヤコブセンの古い椅子、北欧の陶磁器、砂に埋もれていたという美しいフォルムのスプーン、不思議な照明や家具、オブジェが控えめに、そして詩的にディスプレイされていた。本好きの主人らしく壁一面には古書が並んでいる。思い切って中に入ると、ご主人の澄さんが声をかけてくれた。夢中になって深夜まで話をし、それからは毎晩のように会いに行った。たくさんのことを教わり、また発見の喜びを経験した。経年変化したプラスティックの美しさ、薄いソフトカバーの本の魅力。今まで気がつかなかったモノがまとっている美しいテクスチャーの存在を知ったのだった。東京湾岸で拾ったという子供用のゴム長靴までが澄さんの手にかかると詩情を漂わせていた。店は夜な夜な魅力的な人たちが集まるサロンになっていて、そこで何度もメディアにのる以前の、時代の気分が生まれていく瞬間に立ち会った。
そんなpmpyの澄さんと、麻布にあったこれまた幻のようなカフェと古道具の店petit culの店主だったきみちゃんとがいっしょになって新たなpetit culとしてお店が始まったのが3年前。ふたりの類いまれな仕事の断片を集めた本ができた。企画したのはグラフィックデザイナーの山口信博さん。写真の一枚一枚を、テキストの一字一句を丁寧に味わいたくなる珠玉の一冊である。
petit cul 連絡先 03-5272-9190
1×1=2 二人の仕事
Posted by okuma
